延長12回表2死満塁。7回に登板してから、もう6回。愛工大名電の十亀剣君(3年)は、手の感触を確かめた。
背番号11番。夏の愛知大会で最も長く投げたのは5回。暑さか、腕の疲れか。球が手から離れるタイミングが合わず、高めに浮く。四球で走者を出した直後、二塁打を浴びた。次打者には死球。スタミナ切れか。頭がぐらぐら揺れた。
でも、先発した主戦斉賀洋平君(3年)は6回まで2失点。愛知大会同様、本調子ではなく、7回からは左翼を守っていた。「自分がやるしかない」。そう決めた。
打席には、清峰の4番打者。「力でねじ伏せることはできない。落ち着け」。そう自分に言い聞かせ、腕を振った。
初球のスライダー。バットが食いついた。打球は、鈍い音とともに転がり、三塁手のグラブに収まった。「よっしゃ」。右手をぎゅっと握りしめた。
実感した。「1番をつけたことはないけど、おれと斉賀はダブルエースだ」。おれが最後まで、守りきる。
13回表、再び巡ったピンチ。2死二、三塁。打席は清峰の主戦。「力んで制球を乱すより、少し力を抜こう」。一瞬の油断。真ん中直球をセンター前に運ばれた。打球の行方を見たまま動けなかった。
まさかの初戦敗退。でも言い訳はしない、「もう一人のエース」として投げきり、負けた。それがすべてだ。「最後まで投げさせてもらえて、よかった」。試合後、そう言ってうつむいた。