「もしかしたらベンチかも」。試合直前、先発メンバーの発表をそんな気持ちで聞いていた7番打者の活躍で、1万3千人の観衆がつめかけた甲子園球場が震えた。
6回表1死二、三塁。前橋商の二塁走者は、直前にこの日2本目の適時打を放った右翼手、須田勇太君(3年)だった。
「次の1点で主導権を握れると思っていた」と富岡潤一監督。2ストライクから出されたサインはスクイズ。三塁手が走る。須田君も相手投手がモーションに入ると同時に三塁へスタートを切った。打球は投手と一塁手の間へ。
スクイズを警戒した一塁手は前進。いったん一塁のベースカバーに動いた二塁手が、勢いのある打球のコースをみてその処理へ。「自分は無警戒だ。行ける」。瞬時に、そう判断した。三塁を回り、相手捕手が一塁に指示を出すため本塁から離れているのを確認すると、トップスピードのまま本塁に滑り込んだ。
2ランスクイズ。「こんなプレーは初めてだ」と富岡監督も驚く活躍で、流れを引き寄せた。
春は5番を打っていたが、今夏の群馬大会は思うように打てず、「出たり、出なかったり」。5番は、後輩の春山竜君(2年)の定位置になっていた。
「最後の夏だから」。大阪入り後は、「自分でやるしかない」と気持ちを強く持ち、練習でも積極的に動いた。
この日、2安打を放ち、打点2。守備でも6回裏2死二塁から、一、二塁間を鋭く破った打球をつかむと、「高校生活最高の球だった」という矢のような返球で走者を本塁タッチアウトにし、ピンチをしのいだ。
5―3で初戦を制し、「起用してくれた監督の期待に応えられた」と笑顔を見せた。