この日、甲子園はよく晴れて、名物の浜風が吹いていた。強く、強く。
2回、大阪桐蔭の4番平田良介君の打球は高々と左翼方向へ。浜風に乗った球はスタンドにゆっくりと飛び込んだ。
捕手の竹原裕貴君(3年)は立ち上がり、その様子を見つめた。唇をとがらせて、思わず苦笑い。でも、「相手は強打者ぞろい。打たれて当たり前」と気にしない。
4回、再び先頭は平田君。同じく、やや真ん中に入った球は今度は左中間スタンドへ。「見事に持って行かれたな」。5回には1死一、二塁のピンチで平田君が回ってきた。打球はまたもや大きな当たりだ。3万人の観衆が一瞬静まり返った。フェンス直撃の適時二塁打になった。
竹原君は「捕手は第2の監督」と言い切る。守備位置の指示を出したり、打者の特徴を見抜いたり。だから、どんなに厳しい展開でも決して動揺しない。
ピンチは続く。1点リードの7回1死三塁。打者は、また、大当たりの平田君。バットを立てて体を反らせた。狙ってくる。「どこに投げても打ってくる。すごいな」
ベンチからは「歩かせてもいい」の指示が出た。竹原君はストライクゾーンから外したところにミットを構えた。でも、三浦翔平投手の初球は内側に。またも大飛球。今度は中越え2点本塁打で逆転を許す。竹原君は「バッテリーの意思疎通ができなかった」と言葉を詰まらせた。
5月中旬、竹原君は腰を痛めた。座っているだけで痛くてイライラした。宮城大会中にはひざや肩を痛めた。体は限界に近かった。小学4年から始めた野球も、高校で辞めようと思っている。
甲子園全4試合で、タイプの異なる3投手の球を受けてきた。「勝ったり負けたり。最高に楽しい野球ができた」と笑う。
夢の舞台で終えた夏。後悔はない。ほら、浜風がこんなにも心地よい。