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記録が語る大会史

[記録:大会最多犠打(個人)8]

延長18回、名勝負生んだ手堅い攻守

   小比類巻英秋(三沢=第51回、1969年)

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延長18回の熱戦は球史に残る

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再試合も太田が投げぬいたが、松山商の継投策にかわされた

 過去86回にも及ぶ夏の選手権大会で、今なお名勝負として語られるのが第51回大会決勝、三沢(青森)―松山商(愛媛)の延長18回の試合だ。何度も甲子園で優勝している伝統校の松山商に、東北の小さな一チームに過ぎなかった三沢が互角に渡り合った姿が、高校野球ファンの心をとらえたからだろう。

 三沢が東北勢として、第1回大会の秋田中以来の決勝まで勝ち上がったのは、もちろん好投手太田の力によるところが大きい。太田は2年生だった50回大会に初めて甲子園に出場し、2回戦まで進出。翌年の春の選抜でも1回戦で小倉(福岡)に勝ち、2回戦では強豪浪商(大阪)に延長15回の末、2―4と惜敗していた。最後の夏も、持ち前の速球だけでなくカーブを覚えて投球の幅を広げ、地方大会から抜群の成績で甲子園へ。本大会でも1回戦から4試合すべて1点差の試合を守り抜いた。

 この太田を支えたのが、バックの手堅い攻守だった。

 特に攻撃は非常に明確だった。チーム一の強打者八重沢をトップバッターに据え、出塁したところを何とかホームに返すという形で少ない好機をものにしてきていた。

 そこで重要な役目を担ったのが2番の小比類巻である。無死だろうと一死だろうと、八重沢が塁上にいれば、小比類巻がすることは送りバントとほとんど決まっていた。

 松山商との決勝戦でも彼の役目は変わらなかった。6回。先頭の八重沢が四球を選ぶと、小比類巻はきっちりと投前に転がし、二塁へ進めた。これは大会新記録となる通算8個目の犠打となった。

 しかし、この好機を三沢は生かしきれず、無得点のまま回は進んでいく。ついに両者譲らず延長戦に突入した。

 延長に入ってから、押していたのは三沢の方だ。松山商・井上を攻めた15、16回は、この試合のハイライトでもあった。

 15回は先頭の菊池が安打で出塁し、高田の三前バントを三塁手がジャッグルして一、二塁。バントで1死二、三塁とした後、敬遠四球で満塁となった。打者は9番の立花。

 相手バッテリーがスクイズを警戒し、カウントは0―3に。ここが三沢に優勝旗が最も近づいた場面だった。だが強靭な精神力を持つ井上がフルカウントに持っていく。運命の6球目。立花が振り抜いた当たりは井上のグラブをはじいた。誰もがハッとした瞬間だったが、遊撃手樋野の好バックアップで三塁走者の菊池が本塁で封殺された。続く八重沢の右中間の当たりも、中堅手田中の好守に阻まれた。

 16回も三沢は四球と敵失などで1死満塁と詰め寄った。ここで打者高田は3バントスクイズを決行。しかし大きく外されて空振り。三塁走者の小比類巻が三塁でタッチアウトとなり、好機はつぶされた。

 その後、太田は松山商打線を抑えたが、三沢も井上から点を奪うことはできず、史上初の決勝戦引き分け再試合が決まった。

 翌日の再試合は4連投の太田が力尽き、打線も松山商の継投策にかわされて2―4で敗れた。しかし翌日の新聞は「これほど深い感銘を与えた優勝戦はない」と称えた。

 三沢以後、東北のチームでは磐城(福島)、仙台育英(宮城)、東北(宮城)が決勝戦までコマを進めたが、いずれもあと一歩で届かなかった。優勝旗が白河の関を越えるのは、第86回大会(04年)の駒大苫小牧(南北海道)まで待たねばならなかった。

 (大会最多犠打の記録は、80回大会で山瀬=愛知・豊田大谷=がタイの8をマークしている)

 


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