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「腹くくる儀式」逆転打に 高岡商・井上選手

2005年07月29日

写真

高岡商・井上達大君

 高岡商の4番、井上達大君(2年)は打席に入る前、投手に背を向けてバットを立てて構え、じっと見つめる。その間数秒だが、心に静寂が訪れる。「来た球を打つ」と気持ちを決める。くるりと振り返り、投手に向かった。

 7回裏2死満塁。点差は1点。一打逆転のチャンスを迎え、いつもより少しだけ長い間、井上君は金色に輝くバットを見つめた。

 今年3月に4番を任されるようになってからこの動作を繰り返してきた。左手には冬場の1日千本の素振りでできた直径5センチはあるたこ。そのたこをグリップエンドに合わせ、じっと集中。井上君はこの時間を「腹をくくる」という。

 先制したのに高岡第一に5回2死から逆転され、6回表が終わって6点差。井上君はじめチーム全体が暗い雰囲気になりかけた。猛攻を受けた6回表が終わり、ベンチ前で円陣を組むと、宮袋誠監督が「1点ずつ返していこう」と言った。その言葉に「まだまだだ」と、なえそうになる気持ちを踏みとどめた。

 2点を追う7回裏。1点差に迫った上、満塁の場面で打順が回ってきた。外角の直球を狙った。

 1球目はその外角に変化球が来た。空振り。次のボール球は見送る。3球目、外角高めの直球。思い切り振ったバットは球から大きく外れて空を切った。2ストライク。「追い込まれた」

 打席を外し、またバットを立てて目をつぶる。力んでいた自分に気づき、「空振りしたおかげで相手の投げるタイミングがつかめた」。自分で気持ちを切り替えることができるようになっていた。「難しい低めを打つ気持ちがあれば何でも打てる。1球あれば十分だ」

 4球目、狙い通りの外角の低め、直球が来た。反射的に流し打ちした球は、右翼線に飛んだ。2人が生還した逆転の一打に、一塁上でガッツポーズを繰り返した。

 去年の夏は、先輩たちが敗れるのをスタンドで見ていた。悔しかったが何も出来なかった。今春から4番に起用されたプレッシャーからか、大会1カ月前までは不調だった。

 この日、5打数4安打、打点5。試合終了後も「うれしい、うれしい」と何度も繰り返した。自分たちの粘りの野球を貫き、先輩たちのつらい気持ちを返した。高岡商の夏はまだ、これからだ。


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